無意識に駿河を目で追ってしまうから余計なことを連想してしまうんだ。
 ギュッと目をつむり自分を戒めていると、

「ねぇ」

 ひかりの声を聞こえた。
 いつの間にか私の机のそばにしゃがみこんでいるひかりがいた。

 転校して一カ月半、ひかりとは少しずつ話をするようになっていた。といっても彼女のほうから一方的に話しかけてくるだけ。

 ひかりは不思議な人。体育会系でどこか男子っぽい立ち振る舞いなのに、話をしてみると女性らしいやさしさや気遣いができる人だとわかった。

 前の学校では(かたく)なに他者との交流は避けていたはずなのに、つい返事をしたくなるような質問をしてくるひかりに、少しずつ会話の量は増えている。

 これ以上話をすれば、別れるときにつらくなってしまう。そう思っても、ひかりに会うことが楽しみになっている自分もいた。話しかけられるのを待つ自分を何度も叱った。

「これ、あげる」

 ひかりが差し出す大きな手のなかに、なにか丸いものがのっていた。