「もう学校には慣れたの?」
「まあね」
「友達はできた?」
「うん」

 短い答えで聞きたくないという意思を示すが、
「浜松はいいところよね。近所の人も親切なのよ」
 お母さんは構わずに話を続けている。

「そうなんだ」

 湯気を立てている味噌汁を私の前に置くと、当たり前のように正面の席に座るお母さん。まだ話があるのかとうんざりしてしまう。

「なによ、その顔。まだ怒ってるの?」

 しつこく絡んでくるお母さんに私はため息をついてみせた。

「そりゃ怒るよ。もう何回目の転校なのよ。転勤族のお父さんのもとに生まれたのが不幸ってことはわかっているけれど、いいかげん疲れるよ」
「またそんなこと言って。何度も話し合ったじゃない。仕方ないことでしょう?」
「仕方なくないよ。どうして私まで転校しなくちゃいけないの? 単身赴任って方法もあるのにさ」