おもしろい話が好きだったし、好きな芸能人の話題で何時間もしゃべっていられたほど。

 もう転校することで悲しみに暮れたくない。やがて壊れる運命の関係ならば、見ないフリをしたままで転校までの間を過ごしたかった。
 キュッと唇をかみ、席を立つ。
 トイレへ逃げよう。

「あーあ。フラれちゃった」

 広太の声にクラスメイトがドッと笑い声をあげるのが背後で聞こえた。
 さみしくはないよ。

 ぜんぶ、自分で決めたことなのだから。


 放課後のチャイムが鳴れば、真っ先に席を立ち、トイレの個室で時間をつぶすようにしている。
 生徒たちの話し声や足音が遠ざかるのをじっと待つのも慣れてしまった。

 やがて、部活動のかけ声がトイレにある小さな窓から聞こえれば、ようやく教室に戻る。