「たまには幼なじみに甘えてみなさいよね! 何年一緒にいると思ってんの? 生まれてからずっとだよ、ずーっと。悠希が悲しんでるのも、ツラそうにしてる顔見るのも嫌なの。力になれることがあるなら、なんでも言ってよ。頼ってよ」
私は自分の切り札を使って動く。
「……琥珀が優しい。熱でもある?」
「な、ないよバカ!」
笑いながら私の額に手を当て熱を測る真似をする悠希。
久しぶりに悠希の手に触れた気がする。笑顔を見た気がする。
嬉しい。
「はは、ありがとな、琥珀。ちょっと元気出たわ」
「本当、世話のやける幼なじみですこと」
「お前もな」
「お互いさまでしょ」
周りの目を忘れて会話をしていた私たちは我に返って苦笑いを浮かべた。
ジト目の七海を筆頭に皆がこちらを見ていた。
「はいそこの幼なじみ二人―、まだ楽しい旅行は始まってませんよー、いちゃつくの禁止」
「七海、違うってば!」
「ま、いいじゃん! 仲良しなのはいいことでしょ! そろそろ行こうよ、皆で夏休みの思い出を作りに!」
照りつける太陽に向かって両手を広げた七海に、他の全員が賛同した。
今年は楽しい夏になりそうだ。