「そうやってふてくされてると、せっかくの夏が台無しになっちゃうよ」
暑さで流れる汗を気にしながら横目で彼を見る。
怒っていると思っていたのだが、どうやら違うらしい。
「……なにその顔」
悠希は唇を一文字に結び、眉を下げ、目を泳がせていた。
「何難しいこと考えてんの。いつものあんたなら海なんて大はしゃぎでしょうが」
泳げないのに、何度海に連れ出されて浜辺で待ちぼうけを食らったか分からない。
そんな奴が、こんなに心揺れている原因は、彼女の存在であり、それは未だ問題が解決していないことを示している。
「いや、あの……気まずくて」
やっと聞いた幼なじみの声はとても弱々しく頼りなかった。
「一体どんな別れ方したの」
「それは、言えない」
頑なに答えようとしない悠希に私は苛立ち、吐き捨てるように言った。
「あっそ」
幼なじみが羨ましいと希望ちゃんも七海も言っていたけれど、そんなもの、何の切り札にもならない。
立場を持つ者が勝つのではない。
最後は動いた者が勝つ。
私は自分の立場に甘えて動かなかった。
だから一度、行動を起こした希望ちゃんに負けたのだ。
もう二度と、そんな思いはしたくない。
だから。