そりゃ怖いし不安になるし、緊張もするだろうな、と思う。
だって目の前にいるのは友人でもなければ同級生でもない初対面の先輩なのだから。
「こちらこそよろしくね、花音ちゃん」
花音ちゃんは嬉しそうに、もう一度お辞儀をすると、再び兄の影へ隠れるように身を潜めてしまった。
「こら花音……」
妹を叱ろうとした廈織くん。
「ほっといてあげなよお兄ちゃんー花音ちゃん、まだ緊張してるんだから」
大袈裟に溜息をつきながら言った七海に希望ちゃんも加勢する。
「そうよー女の子には優しく、でしょ? お兄ちゃん」
女子たちの言葉に反論できるはずもない廈織くんは困り果ててしまったようだ。
少し遠くでは、その様子を心配そうに見つめる橘くん。
怖くて声はかけられないらしい。
なんだかんだで楽しい旅行になりそうで安心した私の気がかりは、いつもと違って大人しい幼なじみだけ。
原因はまあ、彼女絡みで確定のようだが、楽しい旅をずっと仏頂面で過ごされてはたまらない。
どうせなら、いい機会なのだから、この旅行中に希望ちゃんと話してみればいいのに。
私は声を小さくして悠希の隣に立つと、楽しそうにじゃれる七海たちを見ながら言った。