「知らない人たちばかりで花音ちゃんも不安だろうけど、来年にはみんな先輩として会うんだし、今のうちに友達になっておいて損はないと思うんだよね」


 本音は私個人の興味もある。

 廈織くんが溺愛する「花音ちゃん」をこの目で見てみたい。

 仲良くなって、あわよくば、もっと廈織くんに近づきたい。


 廈織くんは私の言葉にしばらく考え込んだ後、重い口を開いた。


「うーん。一応、花音に聞いてみるよ」


「うん、お願い」


 半分ダメ元のお願いだった。

 彼が自分のテリトリーから大切な妹を連れ出してくれるかどうかの賭けでもあった。

 後日、予想に反して廈織くんからいい返事がもらえたのは私が賭けに勝ったと言ってもいいだろうか。


「せっかくだから、何日か泊りがけで行こうか。母さんの知り合いが別荘を貸してくれるらしいんだ」


「べ、別荘? 廈織くんのお母さん何者……」


「あれ、言ってなかった? 女優のミヒロ」


 女優のミヒロと言えば、テレビコマーシャルの女王として有名な芸能人だ。

 そんな人が、廈織くんと花音ちゃんのお母さんだなんて。