私は最後の力を振り絞り、残りのメンバーに満面の笑みを浮かべて言った。


「ごめん。用事思い出したから私、帰るね」


 千円札を机の上に置き、私は逃げるようにその場を立ち去った。

 行くあてがないまま、しばらく歩いていると、背後から知っている声に呼び止められた。


「どこまで行くの」


 振り向くと、そこには息を切らした廈織くんが立っていた。

 今日の出来事の元凶である彼の姿に、私は怒りを露にする。


「帰るのよ。ついてこないで」


 そう言っても、廈織くんは私を追い続けた。

 私は根負けし、公園の中に入る。

ベンチに腰を下ろすと、キッと鋭い視線で廈織くんを睨みつけた。


「一体なんなの? こんなところまで私を追いかけてきて」


 しばらくの沈黙の後、ようやく彼の声を聞くことが出来た。


「その……ごめん」


「何が?」


「俺があいつに悠希のことバラしたから、それで怒ったんだろ?」


 そうだけど、そうなんだけど。

でも、少し違う。


「違うよ」


「じゃあなんで急に帰るなんて言ったんだよ」