「ちょっと渚! 今日の相手ってうちの学校の生徒じゃないの?」
小声で耳打ちする私に友達である渚は「ああ」と思い出したように言った。
「確かにうちの学校の生徒だよ。うちらと学科が違うけど」
「……そういうことか」
中高一貫校であり、巨大な校舎を持つ我が校は、普通科、進学科、経済ビジネス科が設けられている。
てっきり同じ学科の生徒だと思い込んでいたのだけど、その予想は外れたようだ。
話を聞いてみると、彼らは経済ビジネス科の一年生で、全員サッカー部とのこと。
男性陣五人の中で、私は一人だけ見たことのある普通科の生徒を見つけた。
直接話したことはないけれど、彼はいつも悠希の近くにいたから覚えている。
久藤廈織は私の存在に気が付くと、不思議そうに首を傾げた。
無理もないだろう。
彼はまだ、私と悠希が別れたことを知らないのだから。
駅前のカラオケ店へ移動し、合コンは開始した。