「あれ? 琥珀ちゃんに隣の子は……あ、悠希の彼女! 珍しい組み合せだね。仲良いの?」
「廈織くん! そうだよー、最近仲良くなったんだ」
楽しげに会話する二人の横で、私は顔面蒼白で立ち尽くしていた。
琥珀ちゃんの背中へ伸ばした手はカタカタと震え出す。
自分が何をしようとしたのか理解するのに時間がかかった。
私は今、何をしようとしたのだろう。
自分を心配してくれた友達に何をした?
今、琥珀ちゃんの近くにいてはいけない。
本能的にそう感じた私は、楽しげに談笑する琥珀ちゃんたちに声をかけた。
「琥珀ちゃん、ごめんね。私、急用を思い出して……悪いけど先に帰るね」
「え、ちょ……希望ちゃん!」
困惑する琥珀ちゃんに申し訳なく思いながらも私は強引にその場を走り去った。
逃げるように走り、自宅に帰った私はお姉ちゃんの横を全速力で走り抜け、自室に鍵をかけるとそのままベッドに潜り込んだ。
寒くもないのにカタカタと全身の震えが止まらない。
「……自分が怖いよ」
私は自覚のない自分の本質の部分に酷く怯えていた。
怯えが自己嫌悪に変わる頃、窓の外はすっかり暗くなっていた。
私服に着替えるため制服を脱ぐ。
そこでスマホが鳴った。
「……もしもし」
「あ、希望? 急で悪いんだけどさ、明日合コン出れない? 彼氏には秘密にしてさー」
着信の相手は仲の良い友達の一人だった。
この際、新しい出会いを求めるのもありかもしれない。
失恋の薬は新しい恋と聞いたことがある。
「彼氏とはもう別れたから、いいよ。行く」
「え、マジ!」
私は友達に勧められるがまま合コンに参加することをその場で決めてしまった。