「うん。全部本当だよ。休んでたのも体調不良じゃなくてそれが原因。黙っててごめんね」


「……あいつに、何か嫌なことされた?」


「ううん。違うの。全部私が悪かったの……悠希は何も教えてくれない?」


「あいつに聞いても、教えない、の一点張りで何も知らないんだよね。希望ちゃんはこんなにツラい思いをしてたっていうのに、酷くない?」


 悠希は今回のことを誰にも言わないでいてくれた。

 その事実が嬉しくて、私は泣きそうになるのを堪えた。

 信号待ちをしながら、私の頭の中は彼への想いでいっぱいになっていた。

 私はまだ、こんなにもあの人のことが好きなのだ。

 その想いに気が付いた時、自然と手が伸びていた。

「幼なじみ」がいなくなれば、彼は私の元に戻ってきてくれるかもしれない。

 そんな醜く歪んだ感情を孕んだまま、私の手は信号待ちをする琥珀ちゃんの背中に伸びた。

 このまま背中を押せば、彼の大切な幼なじみは「消えてなくなる」かもしれない。

 その時、背後から何者かの声が聞こえ、私は寸でのところで正気を取り戻した。