「希望、今日学校行かないの?」


 午前七時。

 私を目覚めさせたのは、自室の外から聞こえた姉の声。

 悠希と破局した次の日から、私は学校を休み続けていた。

 学校では今頃、悪質な嫌がらせをした張本人として私の悪評が広まっていることだろう。

 今度は私が嫌がらせの標的になるかもしれない。

 悪い結果を考えると、中々学校に行こうという決心がつかないままでいた。

 けれど、このままではいけないと感じていた。

 休む日数が増えるほど、復帰は難しくなっていく。

 いつかは必ず向き合わなければいけない問題なのだ。


「行く。朝ご飯用意して」


「う、うん! 分かった!」


 学校を休み始めて四日目の朝、私は登校する決心をし、制服に腕を通した。

 家族が集まる朝食の席に着くと、私はおもむろにスマホの電源を入れた。

 学校を休んでいた三日間、私は外部との接触を全て遮断していた。

 電源の入ったスマホには数件の着信。

 体調を心配するメッセージが寄せられていた。


「大丈夫?」


 突然声をかけられ、私はビクリと肩を震わせた。


 顔を上げると、心配そうにこちらを見るお母さんと目が合った。


「うん。もう熱も下がったから」


「そう、よかった。無理しないでね」


「分かってる」


 私は学校を休んだ理由を姉にしか話していなかった。

 親に嘘をつくのは胸が痛むが、本当のことを話す訳にもいかない。

 朝食を腹に詰め込むと、私は三日ぶりに外へ出た。


「行ってきます」