たった一言。

 なんてあっけない終わりだろう。


「ごめんな」


 悠希の放った言葉に私は返事をせず、逃げるようにその場を立ち去った。

 彼の放った一言は、私が今最も聞きたくない言葉だった。

 謝罪してほしかったわけではない。

 本当は「行くな」と引き留めて欲しかった。

 私の全てを知った上で、それでも好きだと言ってほしかった。

 私は今にも爆発してしまいそうな感情を必死に堪え、暗い夜道を足早に歩いた。

 自宅に着いた私は玄関でお姉ちゃんと鉢合わせた。


「おかえりー。こんな時間にどこ行ってたの? 危ないから夜遊びもほどほどに……希望? どうした?」


 お姉ちゃんの姿を見て、私はその場で固まってしまった。

 次の瞬間、私の中で何かが切れた。

 衝動的にお姉ちゃんへ抱き着くと、声を上げて泣いた。


「うわあああああああっ! お姉あああああああああ!」


「ちょっ、何!」


 お姉ちゃんは突然泣き出してしまった私に困惑しながらも、優しい手つきで背中を擦ってくれた。


「おーよしよし」


 その日、私は自らの手で最愛だった恋人に別れを告げ、初めての恋に終止符を打った。