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「そんなことがあってね、最近まともに寝てない」


 人のいない保健室のソファで私から経緯を聞いた悠ちゃんは、大きく息を吸い込み、肺に取り入れた空気を一気に吐き出した。

 全てを話すことが怖くなかったかと言えば嘘になる。

 自分の置かれている状況が逃げようのない現実なのだと再確認してしまうことはとても怖かった。

 倒れるまで誰にも相談せずにいたことを咎められるかもしれない。

 失望されてしまったらどうしよう。

 首をすくめる私の頭上に訪れたのは、想像していた怒号ではなく、大きくて温かい手の平だった。


「気付いてやれなくて、ごめんな」


 その言葉は、行動はズルい。

 反則だ。

 私は表情を隠すように顔を下に向け、無言で首を横に振った。

 今の私はきっと酷い顔をしているのだろう。

 幼なじみが本気で心配してくれているのにもかかわらず、私ときたら、頬を赤く染め、緩みきっただらしない顔をしている。