悠希と本気で喧嘩をしたのは一体いつが最後だっただろう。


「……あんたは本当に何も分かってない。分かってないよ……これじゃ、希望ちゃんが可哀相」


 本当は、こんな喧嘩をしに来たはずじゃなかったのに。

 私は泣きながら、悠希をキッと睨み付け、言った。


「そんなことだから、ケガなんてするんでしょ! バーカ!」


 言ってしまった。

 今の彼が一番気にしている一言を。

 口から思わずこぼれた言葉に私は青ざめる。

 しかし、撤回することは叶わなかった。


「このっ……!」


 叩かれる。


 振り上げられた悠希の右手を見て、私はギュッと身を縮ませた。

 一秒、二秒、間を置いて私を襲ったのは、悠希の平手打ちではなく、地響きを伴った、雷鳴だった。