「え、琥珀? てっきり希望が忘れ物でも取りに来たのかと思った」
「あのさ、インターフォンはちゃんと確認してからドア開けなよね。知らない人だったらびっくりするよ? そんな格好で出てこられたら」
シャワーでも浴びていたのだろう。
悠希は上半身裸のまま、濡れた髪にタオルをかけて出てきた。
表面上は冷静に対応したが、脳内は大混乱。
「あーうん。暑くて汗でベタベタ気持ち悪くてよ。さっきまで希望がいたんだけど」
「不純異性交遊かと思った」
「ば、バカ言うなよ! 俺らは清い付き合いしてんだよ」
「へえ?」
どの口が言ってるんだか。
憎まれ口を叩きたくなる衝動を抑え、私は話題を切り替えるためにお母さんから持たされたお見舞いの品を悠希の前に提示した。
「ん。これお見舞い……って言ってももうほぼ完治? してるみたいだけど」
私はケガをした場所を指差す。
「コーチが大袈裟なんだよ……俺はもう平気だって言ってるのに、夏休みの練習が始まるまで休めってうるさくて」
「ふーん。でもそれって逆に期待されてるんじゃないの? 一年生でケガ悪化させたら次がないかもしれないじゃん」