「ねえ悠希、希望ちゃんに告られたって本当?」


 中学生になったばかりのある日、琥珀は幼なじみと会話しながら下校していた。


「うん」


「ふーん。で、どうするの?」


「どうするって?」


「だから、付き合うの? ってこと。いいなあ、私も告白されたい」


 悠希は上の空で、けれど確かに言った。


「付き合うよ」


 あの頃から私は悠希に特別な感情を抱いていたように思う。

 当時、原因不明だった胸の痛みに気が付いた時にはもう、彼は希望ちゃんの彼氏になっていたけれど。


 私はまだ何も伝えていない。

 未だ始まっていない想いだから、伝わらないままは嫌だ。


「そっか……よかったじゃん」


 もう、痛みを抱えたまま笑うのは嫌だから。



6話 【スタート】