「もちろん、琥珀さんが僕の気持ちを迷惑に思っているのなら、この場でキッパリ諦める覚悟はあります……でも、琥珀さんは僕の気持ちを拒絶したりしませんよね。そうでなきゃ、今日みたいに二人で出かけてなんてくれないだろうし」
彼はまるで澄んだ泉のようだ。
底まで見えるほど透き通った水は、彼の心の強さと清らかさを表しているように思う。
対照的に、泥で濁った水たまりのような自分の心の状態がとても恥ずかしく思えた。
「僕は琥珀さんの友人で、あなたのことが好きな、ただの男なんです」
痛いほど真っ直ぐな言葉に、私はもう一度確かめるように頷いた。
「橘くんは強いなあ……ごめんね、ありがとう。私、もう自分に嘘はつかない」
幼なじみへの恋心を自覚した日。
同時に終わりを告げた恋心がある。
愛する人の幸せを願い、橘は琥珀に嘘をついた。
自ら閉ざした恋心に涙した男がいたことを、自分のために嘘をつき続けた男がいたことを、琥珀は知らない。