「……私の方が、ずっと悠希のこと知ってるのに」


 悠希がどれほどバスケが好きなのか、私の方が知ってるの。

 どうして悠希の隣に立っているのが私じゃないの? 私の方が、ずっと前から一緒にいたのに。

 悠希のこと、誰よりも知ってるのは、本当は私の方なのに。

 心の内側から沸き上がってくるこの気持ちは一体なんだろう。

 泥水のように濁った汚い気持ち。

 嫉妬という醜い感情。

 どうしようもなく悲しくて、苛立って、子供のように泣き喚いてしまいたい、そんな気持ち。

 扉の向こうから感じられた越えられない壁の気配に私は恐れ、保健室を離れ、走り出した。


 あてもなく走って、走って、走って、立ち止まって、泣いた。


 季節外れのじりじりと焼けるような日差しの下、私は人目も気にせず泣いていた。

 すると、私を心配し、後を追いかけてきた橘くんが体育館の影から姿を現した。

 彼は道の真ん中で立ち尽くす私に気が付き、驚いた表情で駆け寄ってきた。