試合も終盤に差し掛かり、このまま決着すると思った矢先。
ドンッと鈍い音がして、審判の笛が鳴った。
「えっ……待って、今倒れたのって……悠希?」
悠希をブロックしようとしていた相手選手と足が絡まり、そのまま体勢を崩してしまったようだ。
悠希はかろうじて立ち上がったものの、足を引きずっていた為、係の人と共に体育館の外へ出て行ってしまった。
一部始終を二階ギャラリーから見ていた私の体は衝動的に動いていた。
「ごめん、橘くん。私、ちょっと行ってくる」
「え? 琥珀さん!」
橘くんは、私が去った後、同じように慌てて体育館の外へ走っていく少女の姿を見た。
「あの人は……確か」
走り去っていった少女の名は春田希望。
ケガをした選手の彼女だった。