「琥珀さん、二宮さんすごいですね」


「なにが?」


「普通、夏の大会なんて二、三年生が主力でしょう。それなのに、入学して数か月の一年生がスタメンなんて、すごいことですよ」


 今まで悠希の試合を数多く観戦しているが、彼がボールに触れない日を見たことがない。

 それが当然だと思っていたが、ベンチには一度もボールに触れない選手もいるのだ。


「そっか……そうだよね。まだ一年生なんだよね」


「今あの場に二宮さんが立っているのはすごいことなんです。努力の人なんですね」


 橘くんと話すと、今まで気が付けなかった幼なじみの一面が次々と垣間見える。


「そうだね、橘くんの言う通り。あいつの青春全部バスケだもん。努力しないはずがない。私と違って、悠希は本物」


「琥珀さんもバスケやってたんですか?」


「小学生までね」


 当時友達に言われた「下手なんだからやめた方がいい」という言葉で、私はすんなりバスケを止めてしまった。


 思えば昔から周囲の言葉に影響を受けやすい子供だったのかもしれない。


「そうなんですか。琥珀さん、運動神経良いですもんね」


「私、いつも人の言葉に流されてばっかり。だから、本当にあいつのことが好きなのか不安になってきた」


 思えば悠希に抱いたこの気持ちも、流されて生まれたものなのではないだろうか。


「そんな顔しないでください。僕につけこまれますよ?」


「え?」


 橘くんは苦笑しながら言った。


「隙があれば僕はいつでも攻めますよ? って言ってるんです」


「私、今どんな顔してる?」


「自分の気持ちを認めたいのに認めたくないって顔してます」


「……その通りです」


 心中を言い当てられ、私は言葉に詰まってしまった。

 橘くんの洞察力は人並み外れているようだ。

 空気は読めないけど。