「別にいいけど」
自分の問題発言に気が付いた橘くんは慌てて弁解した。
「あの、これはそういう意味ではなく! バスケ部には僕の友達もいて、どうせ行く場所が同じならと思っただけで……他意はないんです」
そうは言うものの、好意を寄せる相手と休日に会うのだから、淡い期待がないはずがない。
「よかったね、橘。デートじゃん」
「こら七海、変なこと言わないで」
「すみません……嫌ですよね」
子犬のような目で橘くんに見つめられ、言葉に詰まった。
「嫌じゃないよ。一緒に行こう」
橘くんとバスケ部の試合を見に行く約束を友人たちの前でしてから一週間。
こうして彼と並んで試合観戦をする最中、私は自分の失敗に気が付いた。
悠希に橘くんの存在を報告していない。
タイミングはいくらでもあったのに。
橘くんは悠希の方に向かって頭を下げた。