「すすす、すみません!」
「あー気にしないで。円満破局ってやつだから。友達に戻っただけ」
「そ、そうなんですか……ちなみにお相手は」
本当に空気が読めないらしい。
「相手?あんたの真後ろに立ってる男」
必然的にこちらの会話が聞こえていたであろう場所に立っていた廈織くんは盛大に肩を震わせていた。
「ひい!」
「うわ!」
七海と廈織くんが破局したと聞いた直後は心底心配したが、それも偽装交際だと知り、今ではこうして笑い話になっているのだから心配はいらないだろう。
「そうだ、琥珀ちゃん。来週の悠希の試合は見に行くの?」
廈織くんは思い出したように言った。
「うん、行くよ。昔からの恒例だから」
「そっか。ボクは残念だけど部活の試合と被って行けないんだ。だから、ボクの分も応援してやって」
「分かった。まあ県大会進出がかかってるし、気合入るよね。ここは帰宅部らしく精一杯応援するよ」
「七海の分もよろしく」
「はいはい」
「あの、琥珀さん」
「橘くん、どうしたの?」
「僕も一緒に行っていいですか?」
橘くんの発言に、その場全員の視線が彼に集まる。