それが、今まで私たちが続けてきた関係。
私が必死に自分の気持ちを隠して築いた今。
「でも! 橘くんには本当に感謝してる。自分の気持ちに正直になるって、気持ちいいね」
そもそも、どうして私たちが悠希の試合を一緒に観戦しているのか。
事の始まりは一週間前に遡(さかのぼ)る。
橘くんに告白され、結果として友人になった私たち。
彼は隣のクラスにも関わらず、私の教室に時々顔を出すようになった。
なし崩しに七海に経緯を話すこととなり、結果的に七海と橘くんも友人になった。
「へえ。まさか琥珀のことを好きな男の子がいたなんてね」
「七海、酷くない?」
「あはは、ごめん。橘は琥珀のどこがいいの?」
七海の質問に、橘くんは即答した。
「全部です」
「あはは! 橘おもしろい! えー付き合っちゃえばいいのに。大切にしてくれそうじゃん」
「簡単には決められないよ」
「琥珀……さてはやっぱり悠希くんのことが……」
「なんでも全部恋愛に話引っ張るのやめてよ」
「だって学校で楽しいことってこれくらいしかないし」
「……」
「あ、七海さんって彼氏とかいるんですか?」
話題を変えようとしてくれた橘くんの質問に私は凍り付いた。
七海は気にすることもなく、言った。
「あー。いたけど別れた」
当然、橘くんは青ざめる。
彼は空気が読めない人種なのかもしれない。