「高校もあんたの試合はちゃんと見に行ってあげるから、スタメン外されないようにね」
「へいへい」
何気ない日常の一コマで、何度も思い知らされる。
私は、どうしようもなく幼なじみが好き。私は一人の女の子として悠ちゃんに恋してる。
絶対に言えないけれど。
でも、密かに想い続けることだけは許して。
隣に並べる今この瞬間が、泣きそうになるほど嬉しいから。
高校入試の合格発表を終えた帰り道、微かに開き始めた桜の蕾に見とれてフラフラ歩いていると、後頭部を小突かれた。
「いたっ」
「フラフラ歩いてると危ないだろ。それに、急がないと母さんたちに怒られるぞ」
昔のように手を繋ぐことはなくなったけれど、歩幅を私に合わせてくれる悠ちゃんの優しさを私は知ってる。
「あ、悠ちゃん高校受験、合格おめでとう」
「おう、琥珀もおめでとう」
希望ちゃんは、この優しさを知ってるのかな。