「なにこれ。ラブレター?」
下校しようと私が下駄箱の戸を開くと、革靴の上に一通の封筒が置かれていた。差出人の名前はない。
首を傾げながらひとまず封筒を鞄にしまい込むと、私は家路を急いだ。
「ただいまー」
焦りと不安で汗ばむ手のひらを拭いながら自宅の中へ入る。
私は早速鞄から問題の封筒を取り出すと、慎重に封を開けた。
「本当にラブレターだった!」
綺麗な文字で、真っ白な便箋には愛の告白が綴られていた。
【高橋琥珀さんへ。
こんにちは、初めまして。突然のお手紙失礼します。僕はあなたの隣のクラスの橘(たちばな)真(ま)広(ひろ)と言います。
単刀直入に言います。僕は琥珀さんのことが好きです。入学式の日、一目見てからずっとあなたのことが好きでたまりません。お返事が頂けるのであれば、○月×日の放課後、仮設校舎の屋上の前の階段で待ってます】
「真広くん……知らないな」
手紙の文章を見る限り、真面目な人なのだろうと思う。
人生で初めて告白というものを経験した私は、にやけ顔を抑えながら読んだ手紙を綺麗に封筒に戻した。