「いちゃつくなら、よそでやってくれない?」


「「は? いちゃついてないし!」」


 揃った私たちの声に、神谷くんは驚いた顔を見せた。


「仲がいいんだね」


 笑う神谷くんに羞恥が煽られていく私は、悠希の顔を見ることがどうしてもできないまま男子部屋を後にした。

 その後、なんとか七海の待つ部屋に戻ると、彼女は窓際の椅子に腰掛けていた。


「あ、おかえりー! ありがとうね!」


「……消灯時間、知らなかったんだけど」


「ねー! 七海も驚いた!」


 ケラケラと笑う七海。

 私の抱えていた彼女への怒りは、いつしか呆れへと変わっていた。


「で? 七海はどうやって見回り切り抜けたの?」


 七海は「ああ」とバスルームを指差した。


「お風呂?」


「廈織くんには押入れに隠れてもらって、シャワーを出しっぱなしにしておいたの。琥珀はお風呂入ってる設定」


「……なるほど」


「琥珀は? 男部屋って容赦なさそうじゃん」


「えっと、それは……」


 言えない。

 悠希と同じ布団に潜って隠れただなんて。


「似たようなことだよ。私が廈織くんの代わりに布団に潜って寝たフリしたの」


「ふーん」


「ふーん、て。なんでつまらなそうな顔するの。もしかして、私と悠希の関係疑ってる?」


 彼女は椅子から立ち上がり、私の寝転がる布団に飛び込むと、心の底から楽しそうに笑った。