数秒間の沈黙。
「え……え?」
経緯を知った悠希は勢いよく布団に寝転がった。
「はー、なんだよそれ」
「私だってさっき聞いたんだよ」
重い空気が漂い始める室内。
その時、今まで一言も喋らなかった神谷くんが口を開いた。
「あのさ、正直どうでもいいんだけど、そろそろ消灯時間だよ」
「え、嘘!」
慌てる私に神谷くんは合宿のしおりを広げ、一角の文章を指差した。
「ここに消灯時間は二十二時三十分って書いてある。今に生活指導が見回りに来るよ」
神谷くんの言葉に、私の体から血の気が引いていく。
「どうしよう……」
「お前が男子部屋にいるってバレたら大変だよな……廈織は、知らん」
男女間の部屋の移動は、即刻停学処分だ。
その時、壁の薄い隣の部屋から生活指導の見回りに慌てる生徒の声が聞こえてきた。
「次はこの部屋か……?」
「とりあえず部屋の電気消して……私、布団に潜って寝たフリするから……」
「そうだな、そうし「次の部屋、見回り入るぞー」
ようやく作戦がまとまったところで、無情にも生活指導の声がした。