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「えー! 告白成功してチューまでしたの? すごい、漫画みたい!」
珈琲を飲み終え、興奮気味に私の話を聞いていた希望ちゃんは声を次第に大きくしながら目を輝かせて言った。
その様子から、元彼への未練など一切感じることはなく、彼女の中で、悠ちゃんとの恋愛は本当に終わったのだなと勝手に安心してしまった。
「ちょ、声大きいって! 結構恥ずかしいんだから……」
「あ、ごめんね! でもそっかぁ……琥珀ちゃん、本当によかったね」
「うん、色々ありがとう。希望ちゃん」
彼女には、「ごめんなさい」ではなく、「ありがとう」を言うべきなのだろうと瞬時に感じ、私はそう言った。
「あ、七海ちゃん!」
そこで、ようやく七海がやってきた。
彼女は頭のてっぺんを雪でほんのり白く染めながら、コートについた雪を軽く払う。
気が付けば、窓の外では大粒の雪が降り始めていた。
「やっほー、遅れてごめんねぇ。雪で電車が一本遅れちゃって」
「そっか、大変だったね」
「それで琥珀、バレンタインはどうなったの? 二宮くんとの関係は相変わらず幼なじみのまま?」
七海の質問に私は無言で首を横に振る。
結果を知っている希望ちゃんも、七海を驚かそうと、その瞬間を黙って見守っている。
「違うの? え、じゃあもしかして……」
そして私は満面の笑みで七海へと報告する。
私と悠ちゃんの、これから始まる新しい関係を。
「悠ちゃんは、私の彼氏になったよ」
私の言葉を聞いた七海が、店員さんに注意されるレベルの驚きの声を上げたのは言うまでもない。
後から聞いた話。
七海はなんと、バレンタインをきっかけに橘と付き合うことになったらしい。
私の知らないうちに、一体何があったのだろうか。
これは後々しっかり友達として事情を聞かなければ。
後日予定した七海への事情聴取のような場面を頭の中で思い浮かべながら、それから私たちは日が沈むまでそれぞれの恋の話に花を咲かせた。
生まれた時からいつも一緒で、いつの間にか認識は家族になっていて、抱いた恋心がおかしいものなのかもしれないと不安になる夜もあったけれど、私は彼との関係を、家族ではなく、幼なじみではなく、キョウダイみたいなものでもなく、恋人から始めたいと思った。
そしてその延長線上でいつか、悠ちゃんと本当の家族になれますようにと今の私はただ、そっと神様に願うばかりだ。
【おわり】