「琥珀が……来ると思ったから」


「ははは、なにそれ」


「お、俺だって考えたんだよ! いつまでも琥珀に部屋掃除してもらうわけにはいかないし、そしたらお前、いつか呆れるかもしれないし」


 呆れる、という事実はもう随分前から変わっていないのだけれど、だからと言って、私が悠ちゃんのことを嫌う、だなんて、今さらありえない。


「ばっかだなあ、悠ちゃんは」


 昔から、不器用で、鈍感で、でも時々しっかりしてて。

 高校生になった今でも、私は彼の全部を把握できていないのである。

 毎日が新しい発見ばかり。

 彼の知らない面を見る度、好きになっていくばかりだ。

 私は手に持っていた手提げカバンから持ち運び用の小さなコテを取り出す。

 このカバンの中に入っているのは、私を綺麗に着飾ってくれるアイテムたち。

 彼へ告白する勇希を与えてくれるものたちだ。


「ねえ、悠ちゃん」


「ん?」


 コテと一緒にメイクポーチを引っ張り出し、私はそこでようやく彼の方へ正面から向き合って笑顔を見せた。


「髪、可愛く巻いてくれない? 私がメイクしている合間にさ」