「もうすぐこの部屋に廈織くんが来るんだよね」


「……は?」


 私は七海の言葉に飛び起きた。


「合宿の前日に言ったじゃーん。なんで驚くの」


「いや、あのさ……仮にも勉強合宿じゃん? やっぱりマズイんじゃないのかなって」


「大丈夫だよー。琥珀は心配し過ぎ」


「だってさー」


 バレて怒られるのは、共犯者の私も同じなのだが。

 私は喉まで出かかった言葉を呑み込み、諦めたように重い腰を持ち上げた。


「で? 私はどこに行けばいいのよ」


「え? 廈織くんと入れ替わりで悠希くんたちの部屋」


「マジで」


「神谷くんはともかく、悠希くんは琥珀の兄弟みたいなものだし、安心でしょ」


 しばらく悩んだ末、私はようやく観念した。


「……分かった。じゃあ、ごゆっくり」


 最小限の荷物を持って、部屋を出ていこうとする。

 そんな私の背に七海は礼を言った。


「琥珀、ありがとう! 今度パンケーキ奢るから!」


「絶対ね。トッピングしまくってやる」