* * *
悠ちゃんの部屋に入るのは、本当に久しぶりだった。
最後にこの部屋を訪れたのは確か……悠ちゃんがバスケの試合でケガをして、そのお見舞いを渡しに来た時だっけ。
その時、私と悠ちゃんは言い合いになって喧嘩して……この部屋で仲直りして一緒に夕陽を見た。
そして私は決意したのだ。
もう、逃げないと。
窓の外の景色はあの頃とは一変していて、眩しかった夕焼けが、輝いていた緑が全てかき消されるように白に覆われている。
外気との温度差で曇る窓ガラスを指でなぞったところで自分の部屋のカーテンが開いていることに気が付く。
部屋の中央にはあろうことか今朝脱いだばかりの下着が落ちていて、今日この場所にいるのとは別の意味で顔を赤くする。
それを悟られないように、私は悠ちゃんに背を向けたままで言う。
「部屋、片付いてるね」
「え? あ、ああ……」
それは、悠ちゃんが部屋のドアを開けた瞬間に気が付き、思わず「おお」と声を上げてしまった変化の一つだった。
小さい頃から私がこの場所に訪れる時は決まって毎回散らかっているのが当たり前で、私はそんな彼の部屋を掃除に来るのが日課になりつつあった。
しばらく部屋を訪れていなかったから、これはそうとう酷い有様になっているのだろうな、と想像していたのだけれど、私の想像とは違い、悠ちゃんの部屋は綺麗に片付けられていた。
首を傾げる私に、悠ちゃんは自分のうなじをかきながら言った。