「ふうん」


 いつの間にか、七海と希望ちゃんは仲が良くなっていたらしい。


「あ、琥珀ちゃん。鼻の頭が真っ赤! 外、寒かったでしょう? 何か飲む?」


 そう言って、希望ちゃんは手をすり合わせる私の前にドリンクメニューを広げる。

 指摘通りに鼻の頭を指で撫でてみると、冷たさを感じ、鼻の頭が冷えた指先より更に冷たくなっていたことを知る。

 自覚した途端、鼻の奥から液体が流れ出してきて、私は慌てて鼻を啜った。


「じゃあ、温かいココアで」


「りょうかーい」


 注文が決まったところで七海ちゃんはテーブルに備え付けられていた呼び鈴を鳴らす。

 すると素早く先程の店員がやってきて、私のココアと希望ちゃんの飲んでいた珈琲を紙にメモして戻っていった。

 そこでようやく私は窓の外の雪が降り出しそうな雲を気にしながら「ほ」と息をついた。

 客数の少なさもあってか、注文したココアと珈琲は数分で私たちの前に登場した。

 店内に入った時より一層強い珈琲の香りと甘いココアの香りが鼻を刺激する。

 私の注文したココアには、店のオリジナルなのか、猫の形をしたマシュマロが浮かんでいて、思わず頬が緩み、黄色い声を上げる。


「わー! かわいい! 今こういうの流行ってるよね!」


 私の注文したココアは希望ちゃんもお気に召したようで、私たちは飲み物が冷めるのも忘れて、写真を撮りまくった。

 けれど悲しいことに、ココアに浮かんでいるマシュマロ猫は、飲み物の熱さでゆっくり溶けてしまった。

 ドロドロに溶けてしまった「可愛かった」ものの残骸をスプーンでココアと一体化させながら、私はようやくぬるくなったココアを口に運んだ。


 そして、私は同じように珈琲を口に運ぶ希望ちゃんに話かける。