私は現在、希望ちゃんが指定した場所に電車で向かっている真っ最中だ。

 希望ちゃんは集合場所として、彼女の行きつけのカフェを提案した。

 場所は学校近くの駅から一つ離れた隣町で、彼女曰く「すぐに分かるよ」とのことだった。

 距離にして一駅ほどしか離れていないので、電車はほんの数分で目的地周辺にたどり着いた。


「こんな駅あったんだ……ていうか寒!」


 改札を抜け、外に出てみると、身を切るような風が頬を吹き抜ける。

 足元には降り積もった雪が無雑作(むぞうさ)に建物の隅に山を築いているが、空には厚く黒い雲がかかっているので時間の経過次第で再び雪が降り積もってしまいそうだった。

 私はマフラーをきつく口許まで引き上げ、感覚の無くなりそうな程冷たくなった指先を擦り合わせながら辺りを見渡し、目的の建物らしきものを見つけた。


「あ、あれかな」


 水分を含んだ重い雪を踏みしめながら店にたどり着いた私は木で出来た重い扉を両手と体重をかけて開き、店内に入る。

 それと同時に扉の上部に取り付けられていた来客用の鈴が「ちりん」と気味のいい音を立てる。


「はーい」と厨房らしき場所から声がして、中から音に気が付いた店員さんが姿を現した。


「いらっしゃいませ。おひとり様ですか?」


「あ、待ち合わせです」


「失礼いたしました。ごゆっくりどうぞ」


 店員とマニュアル通りのやりとりを終えると、私は四角い店内を一望した。


「あ、希望ちゃんいた」