七海と希望ちゃんの手を借りて必死に勉強した二学期の中間テストも無事に終わり(結果はさておき)季節は冬を迎えた。

 それから色々なことがあったけれど、時間の経過とは驚くほど早いもので、「あ」と気が付いた時には既に冬休みが終わっていた。


「ねえねえ琥珀! 来週が何の日か知ってる?」


 憂鬱な新学期を迎えて早くも一か月が経過したある日の昼下がり、七海は興奮した様子で言った。


「え、来週? ああ、バレンタイン?」


 そこで私は七海の背後に目を向ける。


「そう! 学校中の生徒も先生も、皆がチョコレートに夢中になる一年で一度のハッピーなイベントだよ!」


 両手を上げながら大きな声でそう宣言する七海。

 そんな彼女に私は二度折ったスカートから覗く生足をすり寄せ、伸びたセーターの袖口から指の第一関節だけを晒しながら溜息をつく。


「バレンタインがそんなにいいイベントとは限らないけどね」


 お昼を食べ終え、胃に溜まったものの消化作業に伴う眠気という副作用に悩まされながら、私は吐き捨てるように言って、窓の外に視線を移す。


 窓の外はいつのまにか色を失い、白く、寒々しいものに変わっていた。

 黒い雲が空を覆っていて、「ああ、雪が降りそうだな」と思う。

 そもそもバレンタインというイベント自体、それほど古い文化ではないと知っているのだろうか。