「ははは、心配し過ぎですよ……僕は大丈夫ですよ。こう見えても結構頑丈ですから! それより、師匠にケガがないようで安心しました……女子にケガさせただなんて、洒落になりませんからね」


「さっき頭擦(さす)ってたじゃん……私のことなんて、もう用済みなんだから、放っておけばいいのに」


「用済み? 何の話です?」


「橘は、かっこよく変身して、皆から、琥珀から注目されるようになったんだから……そうなったら七海はもういらないじゃん……その師匠ってのももういいよ」


 どうして私は今まで気が付かなかったのだろう。

 私は今まで、偽善者として、人の役に立つことをしようと沢山の女の子の相談に乗ってきた。

 その中で、私は何度も彼女たちの抱える悩みを聞いたじゃないか。

 彼女たちの抱える「症状」を聞いてきたじゃないか。


「ししょ――――柳さんは、そんな風に思ってたんですか」


「そんな風って……七海にとってはそれが全てだよ。橘にとって利益がないなら私はもう用済――――」


 片手で上半身を起こし、もう片方の手で私の言葉を遮る形で口を塞いだ橘は、悲しいものを見た時のような笑顔で言った。