橘は髪を切り、とてつもない変化をしていた。



 いい方向に。


 店を出た途端から、明らかに先ほどまでと向けられる視線の種類が違う。

 凝視、というほどではなく、すれ違いざまに視線が一瞬向いてしまうという程度のものだけれど、その変化は髪を切る前の橘には向けられていないはずのものであることは明白だった。

 狙い通りの結果に、ひとまず胸を撫で下ろす。


「さ、次は洋服だよ」


「服、ですか」


「そ。あんた、頭だけメンズモデル並みにしてもらったのに、いつまでそんなだっさい格好でいるつもり?」


「ええ……」


 ダサい、と指摘され、初めて気が付いたように橘は自分の着ている服を改めて見返している。


「はーあ。ほら行くよ。次は三階のメンズファッションエリアね」


「は、はい」


 戸惑う橘の前をつかつか歩きながら私は次の目的地へと向かった。