私は感情全般が理解出来ないといったわけではない。
むしろ逆。
誕生日をサプライズで祝ってもらえば両手放しで喜ぶし、大切なものを侮辱されたりしたら顔を真っ赤にして怒りもするし、誰かに裏切られたら哀しいし、放課後のカフェで友達とケーキを食べながらおしゃべりする時間は楽しいと感じる――――喜怒哀楽は、ハッキリしている。
私が何かを知りたい、と心を乱される時、それは――――無知との遭遇。
知らないことは、知りたいと思う。
それは自然な人間の反応であり、私は生まれのせいで人よりほんの少しだけ知識に対する探究心が強いから、知らない、という状態が嬉しくて、怖い。
知らない、ということは、対処が出来ないということであり、それは何か危機に陥るようなことがあったとしても打つ手がないということ、お手上げ状態になること。
私はそれが怖くてたまらない。
怖くて、無知と遭遇する度、自分の中に増える新たな知識が嬉しくてたまらない。
そういうわけで、感情豊かな私が唯一知らない感情――――恋愛感情に、思春期も相まって、私は興味を持ったのだった。