そうして七海に施されたあらゆる英才教育。


 成長するにつれ、思春期に差し掛かるにつれ、彼女は自分の置かれている環境を拒絶するようになった。

 いわゆる反抗期であり、七海が大人になるために必要な期間であることは両親にも分かっていたが、彼女の場合、反動が大き過ぎた。

 七海は両親へのあてつけのように机に向かうことを止め、毎日夜遊びに出掛けるようになった。

 それでも学業の成績を落とさなかったのは、彼女の中に少なからず両親への反抗に対する罪悪感があったからだろう。七海の髪が金色になったのもこのこの頃だ。

 七海が思春期をかけて膨大な知識の代わりに身に付けてしまったのは、他者を見下す目線――――弱者を蔑む態度だった。

 知識を持つ者が強者であり、それ以外は弱者でしかない。

 両親の教えが七海の人格形成に大きな影響を与えた結果、彼女はそれを当然のことだと思う人間に育った。

 七海がそれまでの人間ではなかったという理由は、その考えに囚われていない、といった点だろう。

 彼女は知識ともう一つ、生まれ持ったスキルを持っていた。

 社交性。

 場の空気を読み、初対面でも適度な対人関係を構築できる。人の気持ちが分かりすぎるほどに分かっている。その操り方でさえ。

 七海はその二つを使いこなし、人を見下しながら、かといって、見下される形をあえてとった。

 それが七海の考える、人間関係を構築する手っ取り早い方法だったから。

 それには夜遊びも、明るい髪の色も大きく役に立った。