「それは、未練の言葉でしかないだろ。あの時こうしなかったから、こうすればきっと……って、そんな考え方じゃ不幸になるぜ」
「でも、そう考えずにはいられないじゃない……お父さんは私をかばって死んだんだよ? 助けられた私は、後悔するしかないじゃない」
話す度に気持ちが落ち込み、下を向いてしまう私に悠ちゃんは真剣な表情のまま言った。
「それだよ、それ」
「どれよ」
「父さんがお前をかばったって話。どうしてお前が後悔する必要があるんだよ」
「だって……私はお父さんに助けられたから……」
「それは父さんが自分で考えて起こした行動だろうが。お前を助けなければ、お前が死ぬだろうと咄嗟に思ったから、走ったんだろう。そのせいで自分が死ぬかもしれないって思ったのかもしれないよな。それでも、お前を助けたんだよ」
「……条件反射だったんじゃないの」
どうしても、自分に都合のいい解釈が出来ない。
「反射で娘を助けるなんて、そうとう大切に思ってなきゃ出来ないだろ。行動の結果、父さん自身は命を落としたけど、どうしても助けたかった娘は、琥珀は助かった。それなのに……当の本人、お前がそんなんじゃ、父さんは成仏できないだろ」
私は何も言い返すことができず、口を一文字に結んでいる。
そうなのか、と妙に腑に落ちる言葉だった。
お父さんが一番大切にしていたであろう、娘の私がお父さんの死を認めようとせず、その死を自分のせいだと責め続けているせいで、お父さんは今も成仏できていないのか。
もし、そうだとしたら、私には、これから何ができるのだろう。
「……ねえ悠ちゃん、私、どうしたらいいんだと思う?」
分からないから、私は幼なじみに尋ねる。
悠ちゃんは真剣な表情を崩し、優しい笑顔で言った。