「で、今日一日、琥珀は何をして過ごしたんだ?」


 先ほどの余韻が冷めやらぬ中、悠ちゃんは話題を変えるためなのか、思いついたように言った。


「今日?」


 そこで私は首を傾げながら一日を振り返った。

 一言で語るのには多すぎる情報量に、私はその中でも一番と思われる事柄を抜き取ることにした。


「今日はお父さんの命日だから、お墓参りに行ったよ」


「ふーん。そっか。お供え物は無事だったか?」


「へ?」


 一瞬、悠ちゃんの言葉の意味が理解出来ずに私は首を傾げた。


「だーかーらー、お供え物の菓子! 封開いててカラスとかに食われてなかったかって聞いたんだよ」


「……どうして悠ちゃんがそんな心配をするの?」


「はあ? お前、自分が備えたものの心配するのは当然だろうが」


 私は半日前の場面を脳裏に思い出す。

 お母さんと一緒にお父さんのお墓を訪れた際、墓には既に誰かが来た形跡があり、花と線香、それから見覚えのある包みと菓子が供えられていた。

 既視感の正体は、悠ちゃんが先日旅行のお土産にくれたお菓子だった。


「あのお菓子とお線香……悠ちゃんだったんだ」


「なんでそんなに驚いてんだよ」


 ぽかんと口を開け、悠ちゃんの顔を驚きの表情で見つめる私に彼は不服そうに言った。


「いや、ちょっと予想外だったんだよ。こんな日にお墓参りに来るのは身内くらいかなーって思ってたから」


「俺は身内じゃないってか」


 悠ちゃんの言葉に私は慌てて謝罪する。

 頭を下げた私に悠ちゃんは溜息をつき、諭すように話し出す。