「俺、多分、本気で希望のこと好きだったわけじゃないと思うんだ」


 薄々感じていたこととはいえ、こうして本人の口から言葉にして出されると、反応に困ってしまう。

 それは悠ちゃんが希望ちゃんの告白を受け入れたその日から感じていた疑問への答えでもあった。


「ちょっと待って、お茶買ってくる」


 これから話しが長くなることを想定し、喉の渇きが限界に達した私は、先程のアイスのお礼も兼ねて、二人分のお茶を売店で買って席に戻る。

 冷えたペットボトルを悠ちゃんに手渡したところで悠ちゃんの話は再開する。


「それで、どういうこと?」


「ほら、最初に告白してきたのって希望からだったじゃん。俺も告白とか、付き合うとか初めてだったから舞い上がってさ。だから、好きってわけじゃなかった。確かに可愛いと思ったけど、それまでだったんだよな。でも、付き合ってる以上はそれなりの努力をしなきゃいけないし、そうこうしている間に付き合いが惰性になっていったんだ」


「はー最低だね」


 私の言葉に悠ちゃんは声を上げて笑った。


「だよなあ! でも、そう考えると、別れ話の時に言われた言葉全部に納得がいくんだよ」


「何言われたんだっけ」


 過去の事とはいえ、気まずかったことをこんなに明るく話せているということは、当時より、悠ちゃん自身の心の傷も癒えたのかもしれない。

 それは喜ばしいことだけれど、今まで辿ってきた道を思うと素直に喜べない。