だって当然でしょう? 私の好きな人は、すぐ目の前にいるんだから。


「……いる、けど」


 頬を赤く染め、動揺しながら答えると、悠ちゃんは意外、といった感じで更に質問を重ねてきた。


「へえ! どんな奴?」


 こうなったらもう、自棄(やけ)で答えるしかない。


「えっと……普段はヘタレで女心なんて微塵も理解してないような超鈍感野郎なんだけどね。元カノ泣かすわキレさせるわで、手に負えないようなバカだし」


「うっわ琥珀、それは男の俺が聞いても酷い奴だな」


 いや、お前だよ。


「でしょ? でも時々ね、凄くかっこよくなるの。弱ってる私に、一番嬉しいことをしてくれたり、ツラい時に慰めてくれたり……そんな、私にとっては誰より優しくて好きな人」


 私の言葉を悠ちゃんは机に肘をつき、その上に頭を乗せながら聞いていた。


「本当に好きなんだな、そいつのこと」


「何よ、悪い?」


「いや、なんていうか、複雑」


「は?」


「琥珀に好きな奴がいるのかーって考えたら、なんかこう……いい気分じゃねーなあって」


「なにそれー」


 誤魔化すようにおどけて笑って見せたけれど、内心、喜ばずにはいられなかった。

 だってそれは。

 悠ちゃんが感じているその感情は――――嫉妬でしょう?


「だって、仮に琥珀がそいつとうまくいったら、俺とこうして二人で話す時間も減るわけじゃん。希望と付き合ってた俺が言うものなんだけど」


「まあ、恋人優先になるのは仕方ないよね。心配させたくないだろうし、それだけ好きだったんだから」


「それなんだけど」


 私の言葉を遮って、悠ちゃんは語り出す。


 私がずっと気になっていた、彼女との関係について。