エスカレーターを乗り継いで屋上へたどり着いた私たちは、屋外からマイクのような音声機器を通して聞こえる人の声に気が付く。
「何かイベントでもやってるのかな」
誘われるがまま屋外に出た私たちは、沈みかけた夕陽の眩しさに目を細め、その先に見えた人だかりに圧倒された。
私の予想では、屋上は一面がパーキングエリアになっているとおもっていたのだけれど、それは私の暮らす田舎周辺の常識で、比較的都会に新設された大型デパートはこの常識とは大きくかけ離れていた。
屋上の中心部には大きなイベントスペースが完備されていて、その周囲を囲うように植物が植えられている。
そして建物を取り囲むように簡素な屋台が軒をしめている。
中央のイベントスペースでは、マイクを片手に集まった子供たちに向けてお姉さんが笑顔で何かを話している。
特設ステージ上に掲げられた看板には大きな文字で「ちびっこヒーローショー」の文字が。
今日が日曜であることを思い出した私たちは、屋上に集まったこの子供の集団の目的をようやく理解した。
「すごい人だね……子供ばっかり」
「だな……とりあえず、どこかに座るか」
悠ちゃんに連れられるまま、私は一角の飲食スペースに腰を下ろす。
比較的人の少ない場所まで来ると、中央のイベントスペースから聞こえる声も、背景として処理できるまでになった。
ひとまず腰を下ろすことのできた私はそこでようやく大きく息を吸い込み、茜色の空に向かって全身に取り込んだばかりの空気を一気に吐き出す。
そして、目の前に腰を下ろし、ヒーローショーを横目で眺める悠ちゃんに向かって言った。