「まあ、そうよね」


「……へ?」


 あっさり引き下がった晴香さんに、一生懸命に弁解していた私は拍子抜けしてしまう。

 もしかして、からかわれただけ?


「それは小さい頃の話だしね。今はもう二人とも高校生だし、それぞれの考えがあるでしょうから、思い通りにはいかないわよね。ちょっとした夢物語よ。悠希と琥珀ちゃんがまだお腹の中にいた頃、産婦人科の待合室で奈々子ちゃんとよくそんな話をしてね」


 晴香さんは昔を思い出すように天井を見上げる。


「なつかしいわねぇ……そりゃ年もとるわ。あの時お腹にいた子がもう高校生になるんですもの」


 お母さんも、同じように昔を懐かしんでいるようだった。

 なんだか場違いな気がして、ほんの少し居場所を探して身を縮めていると、晴香さんの頭上から、カラフルなアイスクリームがひょっこり飛び出してきた。


「よっ! 琥珀! 相変わらず車酔いに苦しんでるか?」


 それと一緒にウザさ全開の笑顔も。


「はあ? 休日に幼なじみに会った第一声がそれ? ていうか、体調の悪い人間に言う台詞じゃないし、テンションじゃないからね、それ」


「意外と元気そうだな。はい、アイス。琥珀はレモンシャーベットな。口の中さっぱりしていいだろ」


「……ありがとう」