「あ、それいいわね! お母さんも、お婿さんのお母さんが晴香ちゃんなら安心だわぁ」
「お母さんまで!」
いくつになっても、そういうやりとりはするものなのだなあ……としみじみ思う。
それは理想でもあり、目標だ。
悪ノリを続ける母親同士に途方に暮れながら、溜息をついたところで、晴香さんは先ほどより少しだけ真剣な声で話し出す。
「でもあの子、自分のことあんまり話さないから、親としては心配でね……今まで付き合ってた希望ちゃんっていう子とも最近別れたらしいのよ。あの子もいい子だったんだけどね、可愛かったし、礼儀正しくて。同じ学校なら、琥珀ちゃんも知ってるか」
「あ、はい。中学からの知り合いだし、友達だから」
未だ敬語と友達言葉の中間で迷いながら私はたどたどしく答える。
そして、不意に晴香さんの口から出た希望ちゃんの名前にほんの少し心を痛めることになった。
そりゃそうか。
何度も家に招くような長い付き合いだったのだから、晴香さんが希望ちゃんのことを知らないはずがない。
別れた理由まで知らないとしても、それなりの交流はあったのだろう。
少なくとも、別れて数か月が経過するこの瞬間まで、彼女の名前を憶えているくらいには。
「そっかあ……友達だったのか。まあ、男女の仲にとやかく口を出すつもりもないけどさ、女の子を泣かせるのはもうこれっきりにしてほしいのよ、私は」
晴香さんは悲しそうな目をしてそう言った。