「悠希ならもう少し待まっててね。今アイス買ってきてもらってるから」


 晴香さんの指差す先には確かに見覚えのある背中があった。

 アイスクリームショップの長蛇の列に並ぶ悠希。


「アイス?」


 首を傾げる私に、晴香さんは先程とは違う、面白いものを見つけた時のようないたずらな笑顔を見せる。


「さっき悠希にね、琥珀ちゃんたちが今バスで向かってるらしいよって教えたら、急に立ち上がったの。どうしたの? って聞いたら、琥珀ちゃんのためにアイス買ってくるって。琥珀ちゃんはきっとバスに酔って、さっぱりしたものが食べたいなんて言いそうだから、だって」


 いつの間にか、悠ちゃんに私の生態を完全に把握されていた。

 単に、長年の付き合いから導き出された推測なのだろうか。

 真実は分からないけれど、今の私にとっては、悠ちゃんが私を思って行動してくれているという事実がどうしようもなく嬉しかった。


「悠希ってば本当、人にあんなに気を使える子だったっけ? 相手が琥珀ちゃんだから? なになに、もしかして琥珀ちゃん、悠希と付き合ってたりする?」


「え、ええ! い、いや……そんなこと、ない、よ」


 全力で否定しようかとも思ったが、わざわざ自分でフラグを折るのももったいない気がして、最終的にはなんともぎこちない返答になってしまった。


「そうなの? 私は大歓迎なんだけどなあ……だって、そしたら奈々子ちゃんと正式に親戚になれるわけでしょ? 最高じゃない」


「はあ……」


 私もよく、友達と「おばあちゃんになっても、一緒に遊ぼうね」なんてふざけ合ったりするけれど、感覚的には似たようなものなのだろうか。