私たち親子が家を出たのは約束の時間を十分後に控えた頃だった。
二宮親子と待ち合わせをしている駅前のデパートまではバスで三十分。
つまり、約束の時間が十分後に迫っている今、急いで家を出たところでバスに乗って目的地まで渋滞にはまることなくたどり着けたとしても、余裕で遅刻してしまう計算だった。
帰宅が夜遅くになることを想定して、防犯対策としてリビングの電気をつけ、カーテンを閉じる。
ガスの元栓からヘアアイロンの電源までを確認したところで更に五分のロス。
結局、私たち親子が鍵穴を回し、家の外へ出た時点で既に約束の時間になってしまっていた。
悪いのは――――うん、私のせい。
悠ちゃんに少しでも可愛く見てもらいたい、という欲を出した私は部屋中に服を巻き散らし、化粧を完璧に施し終えたところでつい、ベッドに身を投げ出してしまった。
原因は一人ファッションショーをいつもより大がかりに開催してしまったことだろう。
私は服を一枚取り出しては投げ捨て、もう一枚と床に服の山を築いていった。
ようやく納得のいく服装に出会えるまでに階段を往復すること三十分。
私の体は出掛ける前の時点で既に疲弊しきっていた。
ベッドに身を投げ出し、「五分だけ……」とお約束の言葉を吐いた私がその約束を守ることは当然、出来るはずもなく、私が目を覚ましたのは、約束の時間が近づいても部屋から出てこないことを心配したお母さんの怒鳴り声を聞いてからだった。