お父さんのお墓参りを終え、昼食を希望通りイタリアンで済ませた私たち親子は、途中で寄ったコンビニの袋を手に下げながらのんびり帰路についていた。

 ちなみに、袋の中身は期間限定商品の抹茶アイス。

 それから私が読むファッション雑誌。


「でもまさか、私たちの他にお父さんのお墓参りに来てる人がいるなんて意外だったなー、お盆でもないのに」


 墓地と併設している古い雑貨店で線香と新聞紙を買い、小脇に花屋で見繕った菊の花を抱えてお父さんのお墓がある霊園の北端にやってきた私たちは、そこでポカンと口を開けることになった。


『お花が……新しい』


 お父さんのお墓には、新しい生花が活けられ、墓石とは不釣り合いな洋菓子がお供え物として置かれていた。

 封が開いているのに、カラスや虫に食べられている形跡はなく、チョコレートが表面に塗られているにも関わらず、今日の暑さで溶けている、といった変化もない。

 洋菓子の台座として敷かれた見覚えのある包みに首を傾げていると、風に乗って私の元へやってきた香りに気が付く。

 それは、この場所での必須アイテムであり、個人を悼む道具であり、田舎の祖父母を彷彿とさせる懐かしい香り。お線香だ。

 私たちより先に供えられたのであろう線香からは、ほのかに煙が立ち上っていた。