鈍い音がして、お父さんの体がまるで人形のように十数メートル先に飛ばされる。
ピクリとも動かなくなったお父さんの頭部から、おびただしい量の血液が流れ出し、あっという間に血だまりが出来上がる。
お父さんの代わりに助かった幼女は、突き飛ばされることになったせいで足を擦りむいたらしく、痛みで大きな泣き声を上げている。
私は、この夢を知っている。
初めてこの夢を見たのは、お母さんにお父さんの亡くなった原因を初めて聞かされた日だった。
そして今日、私はまた、この夢を見ている。
今まで事故当時の記憶がなかったのは、幼い私が、幼いなりに父親の死に大きなショックを受け、嫌な記憶を頭の片隅に追いやってしまっていたからなのだろう。
それがお母さんの告白により、無理矢理呼び起こされてしまった。思い出すことになってしまった。
お父さんが死んだ日の記憶は、私の中でトラウマとなって、今も有り続けている。だから、こんな夢を見るのだ。
お前が殺した。
お前があの時、ボールを反らさなければ、もっと遊びたいと駄々をこねなければ、赤信号を守っていれば、お父さんは死ななかった。
そう、ずっと責められている気分だった。
長い悪夢がようやく終わり、私は現実世界で目を覚ます。
寝ぼけ眼を擦りながらおもむろに見たカレンダーを見て、そこで、どうして私がこの日、お父さんを事故で亡くした悪夢を見たのか、納得する。
今日は、お父さんの命日だった。